責任追及等の訴え

取締役に対する訴え提起請求書

平成22年3月14日

通知人は、平成22年2月25日付けで個別株主通知がおこなわれた通り、6ヶ月以上前から、引き続き日本興亜損害保険株式会社(以下「当社」といいます。)の株式を保有する株主でありますが、下記のとおり、会社法847条に基づき、当社が代表取締役A氏に対し、当社の受けた損害につき、その責任を追及されたく請求します。

なお、個別株主通知済通知書は本日別便にてB監査役氏宛に郵送しています。


第1 請求の趣旨

代表取締役Aは、当社に対して金1億円を支払え。

第2 請求を特定するのに必要な事実


1、平成21年3月13日、代表取締役Aは、株式会社損害保険ジャパン(以下「損保ジャパン」といいます。)の代表取締役Cと、共同株式移転の方法により、経営統合をすることに合意した。

(1)本件株式移転に係る株式移転比率は、同年7月29日に当社の普通株式1株に対し共同持株会社の株式0.9株とされ(以下「本件株式移転比率」という)、他方損保ジャパンの普通株式1株に対しては共同持株会社の株式1株とされた。

(2)代表取締役Aはこの株式移転比率を決定するにあたって、その任務に反し、あえて経営統合の相手方たる損保ジャパンの金融保証保険に関する代替予想損失(以下「本件代替予想損失」という)の検討、及び損保ジャパンが株式移転の株主総会承認決議の前に発行した1,280億円の劣後債(以下「本件劣後債」という)等の検討を行なわず、株式移転比率を決定した。


2、同年7月29日に、代表取締役Aは、株式移転比率算定の経緯等を記載している訂正臨時報告書を関東財務局長宛に提出した。

同訂正臨時報告書には、「X証券、Y証券から、本件株式移転比率が当社の株主にとって、財務的見地から公正である」旨の意見書を取得し、それを参考にした上で、取締役会は、株式移転比率を決定した旨記載されている。


3、同年12月1日、代表取締役Aは、損保ジャパンとの共同株式移転計画承認の件を議題とした、臨時株主総会招集通知を発したが、臨時株主総会は当初予定されていた同年12月22日から同年12月30日に延期され、同日当該議題は承認された。

しかし、本件株式移転における本件株式移転比率は、代表取締役Aの指示のもと、損保ジャパンの金融保証保険に関する代替予想損失及び損保ジャパンの本件劣後債(年5.47%の金利)の発行等の検討を行わず、またX証券からあえて本件代替予想損失を除外した意見書を取得する等により決定された、当社及び当社株主にとって極めて不利益、不公正なものである。

(1)同年7月29日の「『経営統合に向けての契約書』締結について」と題するニュースリリースには、証券会社5社からの株式移転比率算定の結果が掲載され、X証券からの意見書は、12月の臨時株主総会招集通知の株主総会参考書類に添付すると予告されたが、実際には添付されておらず、Web上で開示されたのみであった。

(2)同意見書には、「弊社(X)は、貴社(日本興亜損害保険株式会社)の指示により、相手会社(損保ジャパン)の提供する金融保証保険に関し、貴社(日本興亜損害保険株式会社)又は相手会社(損保ジャパン)から弊社(X)に提供された代替予想損失についての検討を行っておりません。」と記載されているが、この記載は、代表取締役Aが本件株式移転比率を決定するにあたって、損保ジャパンの金融保証保険に関する本件代替予想損失をあえて考慮せず決定したことを示唆している。

本件共同株式移転比率に係る損保ジャパンの金融保証保険に関する本件代替予想損失は、当社の本件株式移転比率を決定するにあたって極めて重要なものである。

損保ジャパンの提供する金融保証保険は同社の経営上の最大のリスクの一つであり、損保ジャパンの平成21年5月20日付け決算短信参考資料によれば金融保証保険の平成20年度の損失は1479億円に達しており、保証残高8275億円のうち、安全性の高いと主張する米国地方債等2249億円と支払い備金引当済みの1107億円を除いてもなお5000億円近い残高があり、厳格に査定を行えば損失を更に計上する可能性はある。このことは、代表取締役Aに於いても十分に認識していたものと思われるが、にもかかわらず、X証券に対し、本件代替予想損失を検討対象から外すように指示した。

当社が当社の普通株式1株に対し共同持株会社の株式0.9株という本件株式割当比率につき、X証券に対し上記限定をつけずに公正な意見書の作成を求めていれば、「当社の株主に取って不公正である」という意見がつき、その旨記載された意見書が添付されることとなり、本件株式移転比率を内容とする本件株式移転計画は、臨時株主総会で承認されることはなかった。

(3)また、当社の12月1日付で招集された臨時株主総会の参考書類には、「最終事業年度の末日後に生じた会社財産の状況に重要な影響を与える事象の内容」として、「重大な債務の負担」であるはずの、損保ジャパンの本件劣後債の発行が記載されていなかった。このことは、当社が、損保ジャパンの本件劣後債の発行を検討考慮せず本件共同株式移転比率の算定及び決定をなしたことを示唆している。

また、同年12月16日付で代表取締役Aが臨時株主総会を再度招集した際の参考書類添付資料には、本件劣後債の発行および償還期限を記載したものの、利率については「固定利率」とのみ記載されており、本件劣後債の当初5年間の固定利率(年5.47%)が具体的数値として記載されていなかった。このことは、本件株式移転比率のレンジ算定に当たって、損保ジャパンの年間約70億円の金利負担も勘案していなかったことを示唆している。


4、以上の通り、代表取締役Aは、その任務に背き、自身の利益、損保ジャパンの利益を図り、本件共同株式移転を是が非でも成立させるために、あえて損保ジャパンの金融保証保険に関する代替予想損失を除外して隠蔽し、当社にとって不利益不公正な株式移転比率を決定し、株主総会において誤った判断をさせ、当社及び当社株主に損害を与えたことは明らかであり、その行為が会社法355条の忠実義務に違反する行為として、当社に対し、同法423条1項による損害賠償責任を負うことは明白である。

よって、当社の被った損害につき、請求の趣旨記載の通りの代表取締役A個人に対し、その責任を追及する訴を提起されたく請求する。

なお、平成21年12月30日の本件臨時株主総会決議においては、同年12月22日開催予定の臨時株主総会に関する本来無効な議決権行使書を有効として取り扱っている点でその決議方法に重大な瑕疵があり、また株式割当に関する損保ジャパンの本件劣後債の発行等重要な事実を記載しない総会参考書類を送付する等招集手続きに重大な瑕疵があり、本件臨時株主総会には、決議取消原因が存在することを付言する。

また、平成22年3月11日、朝日新聞は、「・・・兵頭社長は朝日新聞のインタビューで、経営環境次第では将来、両社の合併も選択肢になるとの考え方を示した。」と報じた。しかしながら代表取締役Aは、平成21年12月30日に開催された、当社の臨時株主総会においては、株主の質問に対しては、「合併は行わない」旨の回答をしており、臨時株主総会に於いて、株主の質問に対し、会社法976条に違反する虚偽の回答を行っていることを付言する。

以上

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